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「翔子?・・・翔子、大丈夫?実験中に珍しいね、翔子がぼーっとするなんて」
「えっ?!あぁ、ジェイムズ、ごめんなさい!ど、どこまでやったっけ?」

「あはは!もう第一回は終わったよ。翔子が何処かにトリップしてる間にね!」

こんな事初めてだった。
今まで実験中に他のことを考えるなんて・・・私はここのリーダーなのに、ぼーっとして注意を受けるだなんて情けない。


あの日、強盗に襲われた時に全身で庇ってくれた誠さん・・・花沢さんが撃たれたとき、同時に凄い力で抱き締められて息が出来なくなってしまった。でも、どうしてだろう・・・あんな状況なのに嬉しかった。

それに、なんて恥ずかしいの!この私が誠さんにしがみついてみんなの前でわんわん泣いてしまっただなんて!

「はぁ、集中できない・・・やっぱりダメかも。このままだと迷惑かけるわ・・・今日は帰る」
「えぇっ!!翔子、ホントに大丈夫?翔子があんな夢中になっていたカーボンボディの実験だよ?!」

ぎゃあぎゃあ騒いでる研究チームのみんなには申し訳ないけど、このモヤモヤした感じをどうにかしないと実験する気分にならないわ。私はさっさと荷物を纏めて花沢さんが入院している病院に行くことにした。

怪我そのものは大したことがないらしいけど、会社の意向もあってきちんと治療して帰るようにって言われたらしく、抜糸が済むまではアメリカにいるらしい。もちろん、つくしさんも病院に泊まり込んで。
それを誠さんが騒いでたっけ。子供がいるんだから早くつくしさんだけでも日本に帰るべきだって。 それを花沢さんが絶対に嫌だって駄々こねてるって・・・よくわかんないけど誠さんが怒ってたわね。「つくしを困らせるな」って・・・。

いつもそう。つくしが、つくしがって・・・でも、彼女は子どもじゃないわ。
どっちかって言うと度胸があってしっかりしてるわ。見た感じは可愛らしいけど、誠さんが心配するほど弱くないわよ。


病院の特別室に行くと、もう廊下まで誠さん達の声が聞こえてきた。

「だいたいその程度の傷で入院するか?かすっただけだろう!つくしまでこんな所に縛り付けて・・・翔が可哀想じゃないか!」
「翔はまだわかんないだろ?みどりには翼がいるし問題ない!うちの教育方針に口出ししないでくれる?」

「何が教育方針だよ!お前の我儘じゃないか!お前に教育が必要なんじゃないのか?! 」
「僻まないでよね、教育したくてもする相手がいないからって。つくしだって俺を置いて帰れないんだから仕方ないじゃん」

またやってる・・・ホントに仲がいいんだか、悪いんだか!


「こんにちは~・・・」

カラッとドアを開けて中に入るとベッド脇につくしさんと誠さん、総二郎お兄様がソファーに座って私に手を振った。
誠さんはすぐに入り口の私の方に寄ってきてにっこり笑ってくれる・・・うわっ!なんだろ、顔が熱い!!

「翔子、今日は早かったんだね。来るとは思わなかったよ!この時間は実験じゃなかったの?中止にでもなった?」

「ううん。気分が・・・気分が実験に向かなかったから。今日はここに総二郎お兄様もいるって聞いたし、誠さんも来るかなって思ったから寄ってみたの。お仕事、今日は大丈夫なの?」

「あぁ、今日はもう会議もないしね。つくしがこっちにいるのもあと僅かだから顔を見に来たんだ」

つくしさんに会いに・・・?
兄妹って、そんなに会いたいものなの?

まるで恋人に会いたいみたいに話す誠さんに少しだけイラッとしてしまった。
ベッドでは花沢さんの怪我した腕を気遣うつくしさんがいて、心配そうに腕をさするつくしさんの頬を花沢さんが撫でてる。
どう見たって誠さんの出番なんてないじゃない! それなのに、なんで病院に来てまでつくしさんの顔を見たいの?


やだ・・・私ったら変だ。つくしさんは妹なのにヤキモチみたいなことを・・・!


「ご、ごめんなさい。私やっぱり実験に戻るわ・・・急がなきゃいけなかったんだわ。花沢さん、多分もう帰国の時も来られないと思うから・・・気をつけて下さいね!それじゃあ・・・!」

「翔子・・・?」
「ごめんなさい、これで失礼します!」

嫌だ・・・この部屋にいたくない!
私は凄く失礼な態度をとったと思うんだけど向きを変えて飛び出してしまった!

「翔子っ!どうしたの・・・?翔子!」

誠さんが私の名前を叫んでるけど振り向かなかった!だって、つくしさんのこと・・・特別なんでしょう!
あの時、私の方をつくしさんより庇ってくれたと思ったのに・・・それでもやっぱり私よりつくしさんの方が大事なのよ!


*******


「あーあ・・・バッカだなぁ!翔子、拗ねちゃったじゃねぇか!早く追いかけてやれば?」
「は?なんで拗ねたんだ?どこに拗ねる原因があったんだよ」

「つくしちゃんの名前出さなくても良かったんじゃねぇの?例え兄妹でも他の女の名前は聞きたくないってことじゃね?」

総二郎に言われて驚いた。 翔子がそんな事を思うんだろうか・・・。

この前の事件の時、翔子の気持ちがわかった気がして安心してたのに。俺の方もそんなにつくしに気をとられてた?
翔子が拗ねるほど、俺はまだつくしのことになると感情的だった?


「どうでもいいけど追いかけたら?噂によると彼女、すぐに引ったくりに遭うんでしょ?今度は荷物じゃなくて心盗られたらどーすんの?」
「盗りそうになったヤツに言われたくないんだよっ!・・・行ってくる!」

花沢の病室を出てエレベーター前まで行ったらちょうどここを降りて行ったばかりみたいだ!
だから急いで非常階段を降りた。

翔子がここを出る前に・・・やっぱりちゃんと話したい!


階段をすっ飛ばすようにして駆け降りたから、1階に着いた時には翔子の後ろ姿を見つけられた。すごく寂しそうな後ろ姿・・・。
あんなに急いで病室を出たくせに全然急いでないじゃないか。

ふんっ・・・意地っ張り!・・・でも、可愛いんだから仕方ないよな。
俺は翔子のあとを追って病院を出て、バスの乗り場の方に行く彼女に声をかけようとした。
その時ちょうどバスが来た・・・翔子はそれに乗ろうとして乗車口のステップに足をかけたんだ!だから慌てて大声を出した!


「翔子!行くな!・・・話があるんだ!」

びっくりした翔子は振り向いて立ち止まった。乗ろうとしたバスには乗らずに・・・俺が行くまでそこに立っていた。


「・・・な、なに?話って・・・話ならつくしさんとしたら?もうすぐお別れなんでしょ?」
「つくしは妹だよ。確かに少し特別な妹だけど・・・それよりも大事な人はちゃんといるよ」

「大事な人・・・?」

「もちろん・・・将来を一緒に過ごしたいって思ってる人だよ。頭が良すぎて話がついていけないし、研究ばっかりでデートもろくに出来ないし、恋愛下手でなかなか気付いてもらえないけどね。その人がいないと俺が困るんだよね・・・だから、伝えてもいいかな」


少し風が吹いて翔子の髪をサラサラと靡かせた。
それを指で耳に掛けながら・・・翔子の瞳は真っ直ぐ俺を見つめていた。


「すぐじゃなくてもいいんだ・・・今の実験が終わったらでいい。いや、卒業してからでいい・・・結婚しないか?」

「・・・・・・え?」
「出来たらさ・・・物理より科学より少しでいいから俺の方を愛してくれない?ほんの少しでいいからさ・・・」

急にまた大泣きになった翔子をバス停で抱きしめながら、その髪の毛を撫ででいた。
それって実験成功ってことでいいかな。本当はほんの少しじゃなくて・・・翔子の全部で愛して欲しいけどね。
翔子から物理と研究と実験を取り上げたら、多分輝きを失うんだろうから。

そのままでいいよ・・・だから、まずは一緒に暮らそうよ。


って・・・俺がせっかく甘い告白をしてるのに、いつの間にか来てるんだ!この連中は・・・っ!!


「誠ーっ!!そこで思いっきりキスしなきゃだめだろう!女ってのは言葉と同時に行動でも示さなきゃすぐ疑うんだぞっ!」
「・・・なんなら特別室、貸そうか?俺ならつくしと一緒にご飯でも食べに行くけど・・・」
「類っ!そんな事言うなら日本に帰りましょうよ!」

「煩いなっ!どこで見てるんだよっ!さっさと病室に戻れよ!花沢っ、お前、仮病じゃねぇか!」

人がいい感じで話してるのに、バス停の真後ろにある植え込みの向こう側・・・そこから3人が顔出して覗いてたんだ!


「翔子ーっ!今度誠の秘密、教えてやるから日本に帰ってきたらうちに来いよー!」
「・・・なんならそいつの本性も教えてあげるから、西門のあとで花沢に来たらいいのに・・・」
「類っ!お兄様の本性なんかバラしちゃダメでしょ!・・・あれ?」

「喧しいんだよっ!もう俺たちは帰るから!もう退院しようが帰国しようが俺は会いに行かないからなーっ!」

バスなんかで帰さないよ。
これからは俺の助手席以外は座らせない・・・そう言うと、少しだけ背伸びした翔子の方からキスが・・・!


「バカじゃねぇの!情けねぇなぁ・・・それでも西門の男かーーっ?」
「いいんじゃないの?どっちからでも。でもさ・・・もしかして、俺たち親戚になるの?アレが義理の姉さん?」
「いやーーんっ!翔子ちゃんがお姉様になるのぉ?!嬉しいかもーーーっ!!」


**


このあと数日で花沢とつくし、そして総二郎は日本に帰っていった。
翔子はあれからも毎日MITニューヨーク研究施設で研究と実験に夢中だ。相変わらず物理と化学とが恋人で忙しい。


だけど、毎朝俺の腕の中で眼を覚ましてるんだ。
一つ増えたもの・・・実験の邪魔にならないようにってリクエストで作った、小さなダイヤが埋め込まれたEngagement ring。


「おはよう・・・翔子。寝言が今日も計算式だったよ?」
「あれ?そう?・・・でも、計算していたのは誠さん、あなたの中にある私の占める割合・・・だったわよ?」



俺の恋人は西門家の一員のくせに茶道を一度もしたことがないという変わり者の上に、マサチューセッツ工科大学(MIT)にストレートで入学した才女で、特に物理学では教授もビビらせるほどの研究をしている。
だけど、意外と恐がりでヤキモチ焼きで意地っ張り。

今日も翔子は俺を放ったらかしてジーンズ姿で研究に向かった。


でも、いいんだ。
俺に満面の笑顔を向けて手を振ってくれる、その左手にはキラリと光るものがあるんだから。



fin.



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SisterComplex 番外編 Troublemaker 終了です。
この誠君シリーズは番外編第3弾の予定があります。それで完全終了です。

明日からは類君の連載「雪の結晶」が始まります。
よくあるお話しだとは思うんですが、少し切ない恋物語?みたいになってます。
類君のつくしちゃん愛が全開・・・のはず(笑)

じれったくなると思うんですが見守ってやってください。
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2018/01/12 (Fri) 00:45 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/12 (Fri) 06:10 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/12 (Fri) 07:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、おはようございます。

7話という短い中で突然のプロポーズ(笑)
私には展開が早すぎて困りました。でも、この2人で延々と書くわけにもいかず。

リクエストも誠と総ちゃんと類の会話が聞きたいとのことだったので、頑張って入れましたよ。
別に翔子と誠のイチャイチャはなくても良さそうだったので(笑)いきなり一緒に寝てましたけどね。
爽やかに置いていかれる誠も、それはそれでいいのかな、と!

でもね、嫌われてた誠がここまで皆さんに応援されるんなら・・・上野明日香もどうかしたら
番外編書いて?ってなるのかな。
てか、ここで書くのも変だけど、類は「殺し屋」を雇ったわけじゃないから(笑)
あの時コメ返に書くの忘れてた!殺さない、殺さない!

2018/01/12 (Fri) 08:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: およ?

ないない様、おはようございます!

あはは!
読者の方から本編の最後の方で「誠に恋人作ってあげて!」って言われたので
番外編~恋の予感~を書いたら、今度は「男3人の会話をもっと聞きたい!」と言われたので
このTroublemakerが誕生したんですけどね。

ラストはまたこの男3人が活躍する感じで構想練っております(笑)


気が付きました?(笑)
そうそう!すでにシスコンは類ではなく誠君です!

「この世に兄って人間ほど危ないものはないからね」って類のセリフが好きです。
あんたの事だよっ!って突っ込んでおりました(笑)

第3弾、そんなに遅くならないうちに書きたいとは思っております。
その時も是非、宜しくお願いします!ありがとうございました。

2018/01/12 (Fri) 08:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様、おはようございます。

そうなんですよ!この私がこの短さでプロポーズさせたんだからなんとか結婚して欲しいんだけど!
事件だって1回しか起こしてないし。

これからが長かったりして(笑)
翔子ちゃんをMITの所謂大学院みたいなところに行かせてやろうか、それともNASAに就職させて
宇宙に出してやろうか・・・いろんな事考えます。

いや、終んないって、そんな事してたら!これ番外編だから!
(と、自分に突っ込む)
3話予定だったそういちろうが10話越えしてるぐらいだから、延ばすの得意なんですよね~!

今日は寒いですね・・・朝から病院なのですでに家出るのが嫌なんですけど。
でも、仕方ない。今から行ってきます・・・。

2018/01/12 (Fri) 08:59 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/12 (Fri) 09:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、おはようございます。

楽しんでいただけて良かったです!
12月のとんでもない話数に囲まれたときに書いていたので、実は内容が纏まらなくて(笑)
急遽、mariageを書いて先延ばししたんですよ!

何処かにおかしな部分があるかも~と、修正しながら書き進めたら、今度はそういちろうを書いてしまって(笑)
毎日暗い話から可笑しな話まで・・・自分でもこんがらがっております(笑)

そんな中で切ない系の話が書けるのか?なんて思うんですけどね。
ロイヤルブルー!懐かしいっ!

あの時は50話ってのに驚いていたんですけどね!
「雪の結晶」はそんなに長くないと思います。(今の所・・・40話ぐらい?)
よくある話なんですよ・・・ただ、雪の季節なので書いてみたくなったわけです。

期待薄で・・・宜しくお願いします。

2018/01/12 (Fri) 10:20 | EDIT | REPLY |   

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