あつあつ・・・♥後編
『今日泊まっていける?』・・・一度言ってみたいって思うけど、それってバレバレだよね?露骨すぎだよね?
だから毎回お酒も薦めずに「今日は車なんでしょ?」って言って自分だけ飲んで、その日のうちに西門さんはさっさと帰ってしまうのよ。
1回も「酒飲んでいいか?」なんて聞きもしない。
だから、今日は思い切って言ってみたの。
「西門さんの好きなお酒でいいよ?」って。少し不思議そうな声で返事してたけど。
そして持ってきたお酒は青いボトルが綺麗な”KISS of FIRE”って日本酒だった。
それがまた美味しくて!もらった蟹で作ったお鍋もいいんだけど、それよりもお酒を飲んでる西門さんの方に目がいっちゃう!
だって結構飲んでるのよ?これって運転出来ないって事だよね?それって帰らないって・・・事だよね?
気が付いてくれてる?
西門さんが大人っぽい女性が好きだなんて言うから、思い切ってピアスにしてみたの。
いつもジーンズでガキッぽいって言うから、恥ずかしいけどミニスカートにしてみたの。
自分でもね、似合わないって思うんだけど、こんなに前が開いてるセーターなんて着てみたの!もうこれでも精一杯なの!
時々チラッと私を見る目が気になって、もしかして服のこと褒めてくれる?ピアスのこと聞いてくれる?って思ったけど・・・。
「なによ・・・ジロジロ見て。どこか変?」
「いや、お前の方こそ顔赤くしてどうしたんだよ。もしかして酔っちゃったのか?今日の酒、美味いヤツだからな!ほら、もう一杯注いでやるからグラス出せ!」
全然聞いてもくれないで、それどころかどんどんお酒を飲まされて・・・緊張しすぎてた私はとうとうダウンしてしまった・・・。
後のことはほとんど覚えてない。西門さんが「蟹を食えっ!」って叫んでるけど、もう蟹なんてどうでもいいのよ!
私の事、どう思ってんだろう・・・毎週来てくれるのは友達だから?素直に帰っちゃうのは私の事を何とも思ってないから?
頑張ってお洒落したのに何も言ってくれないのは・・・気にならないから?はぁ・・・もうどうしたらわかってくれるんだろう!
自分がいつもと違う格好してるなんてすっかり忘れてテーブルに伏せて半分寝てた・・・。
その時、西門さんが大声出して「牧野、絆創膏ねぇか?」って・・・私の目の前に人差し指を出してきた。
よく見たら指先から血が出てる?!うっそ、この人、大事な指を切っちゃったの?!
それを見たときに子どもの頃から親に言われてた言葉「傷なんて舐めときゃ治る!」が頭に浮かんで、咄嗟に彼の指をぱくんと・・・!
それが、この人に火を付けるとは思わなかった・・・絆創膏を取りに行くつもりが何故か彼に抱き締められてるし!
「お礼なんていいの!ほら、民間治療というかタダだし・・・ヒック!いや、そうじゃなくて!」
「遠慮すんなって!俺の礼もタダだから・・・」
は?タダって?って思ったけど、西門さんの腕の力は全然緩まなくて・・・むしろ顔が近づいてない?!
そのうえ酔っ払ってるから足に力が入んなくて彼に体重預けちゃってるし!
ぐらっとして彼の腕にしがみついたら、耳元で囁くように言われたの。
「ピアス、可愛いじゃん。いつの間に?それになんで今日はこんなセーターなわけ?ここんとこ、ちょっと寂しいけど丸見えだったぜ?」
「ふぇ?・・・ひやぁあっ!!」
西門さんがVネックセーターの1番深いところの肌にピトッと指を置いた・・・もう心臓がバクバクで直接彼に伝わりそう!
頭の中が真っ白になって何も言葉が出せなかった。
「あれ?震えてる?もしかして寒いわけ?・・・じゃあ、俺が温めてやるよ、それが礼ってヤツだな!」
「・・・へ?き、きゃあぁーっ!!」
言葉と同時に西門さんがひょいっ!と私を抱きかかえて隣の部屋のドアをバンッ!と開けた。
そのままそこにあるベッドの上に降ろされて、はっと真上を見たらにっこり笑った西門さんの顔が目の前に!
「あっ・・・あの、西門さん!あのね?」
「なんだよ・・・どけって言葉なら聞こえねぇからな?それに、俺に酒飲ませたのもお前だし、泊まるしかねぇんだから」
「そ、そうかもしれないけど、ほら、こういうことの前には必要な言葉ってある・・・じゃない?」
「必要な言葉?それって後からでもよくね?酔ってるときには忘れられるから・・・朝になったら言ってやるよ」
それと同時に西門さんの唇が私のそれと重なった・・・。
「んっ・・・あっ、んんっ!いやぁ・・・!」
「・・・怖がんなって、優しくしてやるから・・・」
西門さんの舌が私の耳元を舐めていく・・・お酒を飲んでるからかもしれないけど、身体中が熱くてたまんない。
そして耳から首筋に舌を這わしていって、片手はセーターの中に入れられた!びくんと身体が跳ねると、クスッて笑いながら、またキスされてく・・・こんなのもちろん初めてだもの、自分の手を何処に置いたらいいかもさっぱりわかんない!
必死でシーツを掴んでいたら、西門さんの指がその片方の手を掴んで指を絡ませた・・・。
もう一つの手が背中に回ったかと思うとプチン!と。急に自分の身体が解放されたみたいな気がしたのに、逆に力が入っちゃう!その自由になった胸を彼の手が持ち上げるようにして揉んでる・・・た、確かにすごく優しい気がする。
でも、どんどんキスが激しいものに変わっていって、部屋中に音が響いてるんじゃないかって思うほど!
なんの抵抗も出来なくて、むしろお酒の力で大胆になってしまったのか、私も気がついたら彼の背中を引き寄せてた。
少し目を開けたら獲物を捕らえた獣のような瞳をした西門さんが見えて・・・ドキン!と心臓が高鳴って、指先まで火がついたように熱くなってしまった!
彼はニヤッと笑って、いきなり身体を起こすと自分が着ていた服をバサッと脱ぎ捨ててベッドの下に投げ捨てた。
もちろん私もあっという間に着ているものは何もなくなってしまって、直接その熱い肌が触れてきた・・・でも、ちょっと待って!!
「あっ・・・あの、西門さん、知ってると思うけど!私・・・!」
「ん?知ってるよ・・・俺が初めてだって。何度も焦らしやがって・・・もう少し早めに甘えてくれりゃ良かったのに」
「今日の事・・・気付いてたの?お酒、飲んでいいよっていう意味・・・」
「もちろん!素直に『帰らないで』って言葉でも大歓迎だったけど、こんな芝居する牧野も面白かったぜ?」
「・・・いつから、知ってたの?」
その質問には答えもせずにフッと笑っただけ・・・その代わり西門さんは私をギュッと抱き締めてくれた。
その後はよく覚えてない。
すごく熱い彼の身体が一晩中私と重なっていて、私も泣きそうなほど痛かったけどそれが何だか嬉しいような気もしてた。
何度も何度も名前を呼んで、こんなに寒いのに汗が流れてて・・・そのうち疲れ果てて寝ちゃったような・・・。
***
次の日の朝、もう随分明るくなってから目が覚めた。
何だかすごく頭が痛い・・・それなのにすごく温かい。でも・・・重い!
「・・・いったぁ!何でこんなに頭が痛いの?って・・・今、何時?・・・あれ?」
起き上がろうとしたら私の身体の上に腕が巻き付いてて動けない。
そういえば昨日、美味しいお酒飲みすぎて最後にしたかった蟹雑炊、出来なかったような・・・で、この腕は?
顔を少し上げたら眩しい笑顔の西門さんが見えた。
「おはよ、牧野。もう酔いは覚めたか?」
「・・・・・・」
「朝の挨拶も出来ねぇほど二日酔いってんじゃねぇよな?昨日の質問に答えようと思ってお前が起きるの待ってたんだけど」
「・・・おはよ、西門さん。あ、あの取り敢えず腕、退けてくれないかな・・・」
そう言った途端、逆に力一杯抱き締められて、私の顔の横に西門さんの顔がっ!
うわぁーっ!朝からそんな至近距離で強烈な笑顔見せられたら、わたし、た、耐えられないかもーっ!
でも、ちょっとだけ力を緩められたらおでこにチュッてキスされて・・・。
「やっと俺のもんになった!これからの鍋パも2人で酒、飲もうぜ?締めは今度からベッドで・・・な!」
冬はお鍋とお酒であつあつ・・・♥と、いうことで!
おわり♥
