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祥兄の発言に大広間にいた全員が驚きの声をあげた。

それもそのはず、西門としての茶会は家元が判断し、亭主も自らがやるのか俺達までが加わるのかは家元が決めること。
それを西門に戻ったばかりの祥兄が進言するなど本来なら有り得なかった。


「いかかでしょうか。最近行われた大掛かりなものでなくても良いのです。著名な方々をお呼びする必要もない。この西門の中で、今ご列席の皆様にご判断いただければと思うのですが」

「祥一郎!それはお前が口出しすることではない!前代未聞だ・・・!現在のお前のような立場の人間が皆様の前で茶会を開く事を申し入れ、自分を評価しろだなどと!」

今度は家元が大きな声で祥兄を諫めた。
片膝を立てて今にも飛び出してきそうな勢いの家元を、家元夫人が隣から引き留め座らせた・・・その光景も初めてだ。


「大変失礼なことを申しているのは承知しております。ですが、このまま総二郎とつくし、蒼を引き離したくないのです。
家元も家元夫人もご存じないからですよ。二人がどれだけ寒く、慣れない土地なのに幸せに暮らしていたのかを・・・自分の家から逃げるように暮らしているのに私には総二郎が今までで1番幸せそうに見えました」

再び会場がシーンとなり、家元達も厳しい顔ではあるけれど祥兄の話を聞く姿勢を見せた。


「私はご存知通り産婦人科医です。つくしは総二郎が東京に戻されたときのショックで1ヶ月の早産となりました。助けていただいた方がいたので幸い病院内で産むことが出来ましたが、数分遅ければ院外で出産ということも考えられたくらいです。
つくしは片腕が不自由ですから、その力の入らない左側を支えるために総二郎は立ち会うことにしていたんですよ?それなのにその役の人間がいない・・・つくしは不安のあまり総二郎を呼び続けて出産が上手く進みませんでした。だから、他の人間に支えてもらってやっとの思いで産んだんです。私はたった1年しか診療所にはいなかったが、この出産ほど辛いものはなかった・・・。
おめでとう、と声をかけるのがこんなに悲しい出産は初めてでした。それだけに早く3人を一緒にさせてやりたいのです」

流石に女だからか・・・家元夫人はハンカチを目元に当てた。

家元は目を閉じて黙り込んだ。
この席上のお偉方は誰も声を出さなくなった・・・そして千春は涙を流していた。


「それでは家元。祥一郎君の提案を受けようじゃないですか?相当な覚悟をしてここにお戻りになったということでしょうし、潔く今すぐに・・・とは言わなかった。ご自分でも稽古の必要がおありだときちんとわかっておいでのようだ」

九条会長が穏やかな声でそう言うと家元始め、全員が「そのように・・・」という意思表示をしてこの場は解散となった。



この時決められたのは祥兄による茶会を秋に行い、その時の様子を全役員で判断、次期家元の指名に相応しいかどうかを決めるということ。同時に俺は会見を行った以上西門にいるのは不自然ということで、やはり金沢の禅寺に謹慎処分として籠もることになった。
秋の茶会で祥兄が評価されれば、その時に俺の継承放棄は認められ西門を出られる・・・つくしの所に戻れることになった。



夜遅く、自室前の廊下に座ってぼんやりとその日の半月を眺めていた。

すぐにでも帰れると思っていたのにな・・・あと、2~3ヶ月延びたってことか。
その頃蒼は何ヶ月だ?生後半年・・・生まれてから半年分のあいつの成長を見ることが出来ねぇのか。

それまでつくしは1人であそこで蒼を育てるのか。
どう言えばいい?多分心待ちにしてるはずだ・・・今、この瞬間にも俺からの電話を待ってるんじゃないのか?
それなのにまだ戻れねぇって説明すんのか?

どうやって電話したらいいのか迷った俺は、スマホを握り締めたまま・・・その手を動かすことが出来なかった。

その時に側に来たのは祥兄だ。
チラッとその顔を見たら俺と同じような顔してる。そして黙って俺の横に来て座った。


数分間、俺達は何も言わずに夜空を見上げていた。名寄からも見えているだろう半月を見ていた。
先に言葉を出したのは祥兄のほうだ。

「総二郎、つくしに電話出来ないんだろ?すまなかったな・・・お前の謹慎処分を解いてやれなくて。ああ言うしか思いつかなかったんだ。本当にすまん・・・」

「なんで謝るんだ?別に祥兄に謝ってもらわなくてもいいよ。むしろ、祥兄があれ言わなかったら俺は多分キレて飛び出してたわ。そうなるとまた騒動が大きくなってあの会見が無駄になるんだろ?結果として良かったんじゃねぇの?」

「・・・まぁな、お前の顔がそんな感じだったから。でも、九条会長の言葉は本当だろう・・・本心では俺なんかよりお前の方に残ってもらいたいんだよ。誰もがそう思ってるんだ。茶人としては幸せだな」


茶人としては・・・でも俺の幸せはもう”あそこ”にしかねぇけどな。


「俺はあと2ヶ月、勘を取り戻しながら稽古をするよ。必ずお前を戻してやる。これは俺の意地でもある。心配だろうが総二郎ももう少しの間辛抱しろ。蒼はまだ急に大きくなったりしないよ。お前が戻った後でも十分にその成長を見ることは出来る。
つくしのことを信じてやれ・・・あいつならちゃんと理解して待っててくれるから」

「あぁ・・・そうだな」

つくしは俺がどんな報告をしても黙って聞いて待っててくれるさ。
そんな事はわかってるんだ。俺の方が早く戻りてぇんだよ。俺の方が早くあいつを抱き締めてぇんだ。


祥兄が俺の側を離れた後、スマホの画面をタップした。


*********


桜子とお喋りしながら届いた荷物を片付けていた。

でも私の気になっていることは総二郎から何の連絡もないことだった。会見が終ってから2日目・・・まだ、なんの処分も決まらないのかしら。それとも私達のことで何か揉めてるってことはないのかしら。

もしかして蒼のことで何か西門が動くなんて事は・・・ないよね?
片付けている私の手が止まったのを見て桜子まで手を止めた。そして私の顔を覗き込むようにして話しかけてきた。


「先輩、そんなに心配ならこちらからかけたら?それはダメなんですか?」

「うん・・・今はもう監視されてないって聞いたからいいのかもしれないけど、家元達と話してたらいけないし・・・かけても出なかったら余計に心配だから、電話は総二郎からって決めてるの」

「変な決め事ですのね。でも相手が西門ですから無理ないですわね・・・西門さんも何してるのかしら!女性をこんなに待たせるなんて男性としては最低ですわ!女は男の言うことを全部素直に聞くと思ったら大間違いですけどね!」

自分の事のように怒ってる桜子を見て、何だか可笑しくなって笑いが出る。
やっぱり1人じゃなくて良かった。例え総二郎の悪口言われたって少しは気が紛れるから。

また手を動かして箱の中の物を片付け始めた。一体どのくらい蒼の服があるのかしら!赤ちゃんってあっという間に大きくなって着れなくなるんじゃないの?なんて声に出したら・・・。

「あら、お一人で終らせるんですの?相手はあの西門さんですもの!戻ってきたら2ヶ月後は妊娠してるんじゃありません?そうなったらすぐにまた必要でしょ?買わなくて済むじゃありませんか!」

「はぁっ?!ばっ、馬鹿なこと言わないでよっ!こんなこと言うのも恥ずかしいけど、実は総二郎との恋人期間ってものがほとんどないのよ。少しは・・・二人の時間が欲しいわよ」

「何言ってるんですか!もう蒼ちゃんがいますわよ」

「・・・確かに」

二人で横で寝てる蒼の顔を見た。
くすっ・・・小さい総二郎が寝てるみたい・・・。

これを早く見せてあげたいなぁ・・・お茶会が終った今は、その日がすぐそこまで来てるような気がして自然と顔が綻んだ。


「あっ!先輩これね、すっごく評判がよかったコートですの!今年の冬には使えますわ!」
「あっ、ホントに可愛いっ!・・・っていうか、またここで冬を迎えるのかしら・・・」

2人で顔を見合わせてクスッと笑った。

そうだね、嫌いではなかったかもね。
多すぎる雪も冷たすぎる風も、そんなに辛くはなかった・・・だって、そこには総二郎がいたんだもん。


このあと蒼がいるから桜子はゲストルームに行って寝ることにした。


私達の部屋にはまた二人きり・・・蒼の寝顔を見ていた時に私のスマホが鳴った。



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2018/01/30 (Tue) 13:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あっはは!総ちゃんだから我慢できないって!
速攻2番目出来ると思うわ。出来たらまたイチャイチャ出来なくてイライラするのよ・・・。

取り敢えず今は半年我慢してるでしょ?・・・無理じゃん?抑えろって言われても。

こんなに長いことシリアス書いてて、話の終りにドッカンエロくいったらドン引きでしょうね(笑)
いや、ここではもう書かないですからね?

祥兄にもすぐ出来そうですよね~!って自分で取り上げるのかな・・・?
それは嫌かも!って、そんなことも書かないですけどね。

禅寺って・・・ゲイがいそうで怖くないですか?
私、昔からお坊さんはゲイだと思っていたからなぁ・・・(神職さんがいたらごめんね)

総ちゃんが狙われそう(笑)


はいっ!真面目に書きます!キリッ!


2018/01/30 (Tue) 19:52 | EDIT | REPLY |   

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