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総二郎の電話は夜、もう寝ようかと思う頃にかかってきた。
この遅い時間というのが少し私を不安にさせる。それでもすぐ電話に出てしまった。


「もしもし、総二郎・・・随分遅いんだね・・・こんな時間まで話し合いだったの?」


・・・あれ?私の問いかけに総二郎からの返事がなかった。それはあまり良くないことが起きたと言うことなのね?


「どうかしたの?問題でも起きちゃった?・・・ここに帰れなくなっちゃった、とか?」

口にしたくなかった言葉だけど、総二郎が言えないなら私が言うしかないでしょう?
そう思って勇気を出して言ってみた。もちろん、そんな事考えたくもなかったけど。

「何か言ってよ・・・私なら大丈夫だよ?結果がどうでも総二郎を信じてるから、その決断に任せるよ?」
『何でだよ・・・どうして大丈夫だって言えるんだよ。俺が全然大丈夫じゃねぇのに・・・』


やっと出てきた総二郎の言葉はやはり暗かった。
どういう結果を言われたんだろう。私は自分のパジャマの裾を、力のない左手でギュッと掴んだ。

「ちゃんと話してよ。全部聞くから・・・全部受け入れるから。総二郎が今からどうなるのかが決まったんでしょう?」
『あぁ・・・決まったよ。すぐにはそこに戻れねぇ・・・ってな』


すぐには戻れない・・・それはあまり予想していなかったことだったから、逆になんの感情も湧いてこなかった。
悔しいとか、寂しいとか、怒りとか、そんな感情はなくて、頭が真っ白になってしまったの。

何か言わなきゃ、そう思うのに何も言葉が出せなくて、二人とも無言で暫く電話を持ったままだった。


『さっき西門の連中から呼び出されてな、金沢の寺に禅修行に行けってさ。早い話が謹慎処分だ。そこには一切の連絡手段は持ち込めねぇからお前と連絡ってのも取れねぇんだ・・・』

「・・・いつまでって決まってるの?祥兄ちゃんは?」

『祥兄は今から稽古に励めってさ。千春は祥兄の婚約者ってことで認められたよ。』

そうか・・・祥兄ちゃんのことは上手くいったんだね?それは良かった・・・千春さんも良かったわ。好きな人と一緒になれるんだね?でも総二郎は?それならどうして総二郎は西門から解放されなかったんだろう・・・謹慎処分が終ったら総二郎はどうなるの?

「そう・・・祥兄ちゃんのことはわかった。西門に戻れるんだね・・・それが希望かどうかは別として、千春さんとは結婚できるのね?良かったね」

『まぁな。それでさ・・・』


総二郎は今日、話があった2人の処分についての内容を説明してくれた。
祥兄ちゃんの方はさっきの話通りだけど総二郎の方はまだ西門が手放したくない、そう言われたらしい。そして祥兄ちゃんが次期家元に相応しいと判断されるまで私達の所には戻せない、初めはそう言われたと・・・。

『俺がそこに戻ったら茶の世界から足を洗ってスッパリ忘れるつもりだろうって言われたよ。そうじゃないって何度も言ったのにな。仕方ねぇのかもな、一度は家を裏切って飛び出た男だからな・・・それを言っちゃ祥兄も同じだけどさ。
だからあいつらは俺達兄弟を信用出来ねぇんだよ。もし、また祥兄が投げ出したら今度こそ後を継ぐのが分家になるからな。それが許せないんだろうよ』

「じゃあ、祥兄ちゃんが頑張ってお稽古して次期家元に指名されたら、その時に総二郎は謹慎処分が解かれて西門を出られるの?総二郎は・・・どうしたいの?そこまで頼られてるんだよ?本気で西門を出られるの?」

『・・・つくし、俺は西門で大勢の人間に頼られるより、お前と蒼に頼られる存在になりたいんだ。俺の人生はお前達と共にあればいい。そう思ってるから家を出ることになんの迷いもない。それに西門と離れても茶道は俺の天職だ・・・どんな形でも続けるから心配すんな!』


やっと総二郎の口から強い言葉が聞けた。私はそれで満足・・・それであなたを待つことが出来るよ?
例えそれが何年かかろうとも蒼を育てて待つことに私も迷わない。

『祥兄が直訴して秋に茶会をすることになったんだ。そこで自分を試せってさ・・・すげぇだろ?自分で言ったんだぜ?その結果次第で俺の謹慎処分は終るか続くか決まる・・・さっき祥兄が約束してくれたんだ、早めに戻してやるってさ!』

「祥兄ちゃんらしいねぇ!いいじゃない!任せましょうよ・・・総二郎、きっと大丈夫だよ。信じよう?」


最短で秋・・・それまでは声も聞けなくなる。
次に話すのはいつになるかわからないけど、金沢に行く前にもう一度必ず声を聞かせてくれると言って今日の電話は切った。


不思議と涙は出なかった。
もっと泣いてしまうような結果かと思ったけど、総二郎のことを西門がどうしても手放したくない存在だと認めてくれたことの方が嬉しかったんだ。あの人は怒っていたけどね。


よく寝ている蒼の髪の毛をそっと撫でながら呟いたの。

蒼・・・あなたのパパはやっぱりすごい人なのよ?沢山の人に認められた立派な茶人なんだよ。
そのパパが選んでくれたのは私達なんだから頑張って待とうね。こんな頼りないママだけどあなたのことを守ってあげるからね。


総二郎・・・心配しないで?
私達はあなたの帰りをいつまでも待っているよ?声はちゃんと覚えてる・・・だから寂しくないよ。きっと耐えられる。


その代わり、帰ってきたときは思いっきりその胸で泣かせてね・・・。


********


次の日の朝、桜子にその話をしたら驚いて固まってしまっていた。

「なんであんたが泣きそうな顔してんのよ!もう決まったらしいから待つって決めたの!落ち込むのやめてよね?」

「・・・なんでそんなに強がってるんです?!もっと怒ったり泣いたりしたらいいじゃないですか!だって、帰ってくるものだとばかり思ってたのに・・・先輩が寂しい思いしなくて暮らせるんだと思って楽しみにしてたんです・・・それなのに!」

私が泣かない代わりに桜子がわんわん泣いてくれた。
バカだなぁ・・・自分の事じゃないのに。ホントに毒舌なくせにお人好しなんだから!


「桜子、ありがとう。あんたがいてくれて良かったよ。昨日の楽しい出来事がなくて、1人ぼっちでこの話を聞いたら泣いてたかもしれない。助けてくれる人が沢山いるんだって感じた後だったから少し落ち着いて聞けたのかも・・・ありがとうね!」
「・・・先輩!私が何度でも電話します!ここに来ることは中々出来ないけど電話ならいくらでも・・・ですから寂しくないですわ!」

わかったわかった!って何度言ってもそれからもずっと帰るまで泣いてた。


そして昼過ぎになって桜子はここを出ていった。
何度も何度も振り返りながら手を振って・・・迎えの車の中でも泣き続けて帰って行った。


「はぁ・・・!1人になっちゃった。でも、頑張らなきゃ!さて・・・と、ご飯作ろうかな!」


両手を高く上げて背伸びしたら、名寄の夏の太陽が眩しくて・・・・・・涙が出た。




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2018/01/31 (Wed) 12:26 | EDIT | REPLY |   
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2018/01/31 (Wed) 15:19 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、今晩は~♥

まずはお礼を・・・ありがとうございました!
とんでもない間違いでしたね!(笑)ホント・・・ドジですから・・・。
助かりました。よくあると思うので・・・またあったら教えて下さい(笑)!!

本当にすみませんでした。訂正しました・・・結構経ってたけど・・・。


お話しの方は、ホントにじれったくして申し訳ないです!!
私の拘りでこんな事に・・・まだね、かいてない細かい部分が残っているので
どうしてもすぐには帰られなくて・・・。

もう少しですからお待ち下さいませ!!
今日はありがとうございました。

2018/01/31 (Wed) 21:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

先に・・・謝っときます(笑)
ご指摘があり修正してます・・・皆さん、ごめんなさいって感じです(笑)
なんで気が付かなかったのかな・・・クソバカ!!ですよね。

もう・・・私が謹慎処分になりたいぐらいです・・・。はぁ・・・。
家元と家元夫人連れて・・・明日にでも金沢に行ってきます・・・(笑)

ついでに類も連れて・・・(笑)謹慎じゃないじゃん!バカンスじゃん(笑)

撃沈・・・今日はなんだか調子が悪いわ・・・類の話しに全神経使ったからかしら・・・。


そうそう!タイトルね!そこ大事!!
やっぱりさとぴょん様もお話し書こうよ~!!
今度リレーしましょうよ~!!
あのシーン書いていいからっ!!思いっきり全部そこ担当!(指導者a様)

あはは!

今後も間違いあったら教えて下さいね~!!ありがとうございました!

2018/01/31 (Wed) 21:15 | EDIT | REPLY |   

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