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つくしが小学部の6年になったとき、あきらのお袋さんに呼ばれて美作に集まったことがあった。


美作は庭全体が花で覆われたような家だから当然そこに桜の木もあって、所謂”花見”っていうのをやったわけだ。
俺達が中等部に上がるっていう祝いの意味も込めてケーキをすげぇ沢山焼いて、うんざりするほどの菓子に囲まれた花見。

庭の隅にピクニック用のシートみたいなのを広げられて、そこにテーブルをドーンと置いて。
紅茶やコーヒーやジュースまでガンガン並べてあきらのお袋さん、ただ1人が舞い上がっていた花見だったような覚えがある。

それを両手を合わせて「ごめん!」って言いながらあきらはそれでもお袋さんの為によく動いていた。

呼ばれたのは子供達だったから当然一人っ子の類以外は兄弟も誘われたけど、司の姉ちゃんはアメリカにいて、祥兄は家元について長野に行ってたし、考はお袋に付き添って神奈川に行っていた。だから行ったのは俺とつくし・・・なんでつくしがって反対したけどあきらが仲間はずれになるからどうしてもって・・・俺の妹じゃねぇしって言ったのに。

「たくさん食べてね!つくしちゃんだったかしら?後でうちの娘達と遊んでやってね。いつもあきら君とだからたまには女の子と遊ばせたいわ!宜しくね!」
「はい!私もいつも男の子ばっかりだから楽しみです」


何を偉そうに・・・お前の方が居候だってんだよ!

テーブルを囲んで座ったのはつくしの右に類、左にあきら。向い合って俺と司・・・なんでこんなことしなきゃいけねぇんだよって思うけど、あきらが困るだろうから言葉にはしなかった。
しかも目の前のケーキ・・・どんだけ作ったんだ?ってぐらい種類があって使用人が切り分けてくれてたけど誰も手を出さない。

「牧野、とってあげる。どれがいい?好きなの教えて?」
「うん!どれも美味しそうだけど・・・どうしてみんな食べないの?」

「俺は・・・甘くないヤツなら食えるかも。あきら、どれが甘くないヤツだ?」
「えっ?司の食べられそうなもの?・・・多分これならいいんじゃないかな、ガトーショコラ・・・食べてみてよ」

「総ちゃんは?総ちゃんの好きなものとってあげるよ?」

「俺は・・・いらない」


出された紅茶を飲んで菓子には手を出さなかった。
一瞬みんなが俺を見たけど「なんだよ・・・放っとけよ」って言うと本当に放っとかれた。
目の前に座ってるつくしだけが俺の皿が空なのを気にして、こそっと苺のケーキなんてものを置いていったけど。

しばらくしたらあきらの双子の妹もやってきて、それからはつくしと一緒に芝生で遊びだした。
ちゃんと作られてるシロツメクサの花畑。やっぱりお袋さんの趣味でシロツメクサの首飾りなんてものを作るためにわざわざ外国から苗を取り寄せて植えてあるんだそうだ。そこに3人が入って一生懸命それを作っていた。


「総二郎・・・」

急に声をかけてきたのは司。つくしのことを顎で指して、ニヤッと笑いながら俺の方を見た。

「なんだよ」
「あいつのこと、どう思ってんだ?」

「あいつ?つくしのことか?つくしは使用人の子だ。引き取り手がなかったからうちで面倒みてるだけ!大体今日だってここに連れてくるような立場じゃねぇっての!」

類もあきらも俺を見てる。面倒くせぇ・・・俺は下を向いて紅茶を飲んでた。

「ははっ!確かに総二郎のタイプじゃなさそうだよな。真面目すぎっていうか地味っていうかさ。でも、牧野って同級生の男には人気があるだろ?西門にいるから総二郎の目が怖くて声かけられねぇんだよ、きっと!」

「は?そうなのか?何処の誰が・・・ってか、関係ないって!」

こいつらの顔を見ないようにしてたのに、つくしが男に人気があるって聞いた途端、背もたれに寄り掛かっていた身体を起こしたからまた3人が同時に俺を見る・・・ハッとしてまた元に戻ったけど、それを見て司がニヤニヤ笑ったのには腹が立った。


「俺は・・・牧野の事、好きだな」

「・・・類?」

「ちょっと行ってくるね」

類は席を立ってつくしの方に向かった。
そしてシロツメクサの花畑の中で女達に混じって何かを話してる・・・類にしては珍しい笑顔に俺達はキョトンとした。

「へぇ・・・類のヤツ、本気なのかな」
「バーカ!花沢が許さねぇだろ?西門の娘ってなら話は別だけど、要するに自分の家がないって子だろ?無理無理!」


「・・・無理、だよな。つくしの場合」

あきらの一言に司が言い返した。そして俺からボソッと出たその言葉は多分、類の事じゃない・・・自分の事だったと思う。


つくしじゃ認めてもらえない。使用人の、しかもその親でさえもういない・・・そんなつくしは自分の相手にはなれない。
誰にも言わずに胸の奥に抱え込んだ想い・・・出来たらこいつを見ないようにしたい。
そうしたら少しは楽になれるかもしれない。そう思い始めた頃だった。

それなのに目の前で類が手を出すと無性にイラつく。
つくしが類の髪に花冠を乗せると照れたようにヤツが笑う・・・その光景が何故か俺を焦らせて苦しくさせた。


「怖い顔してる・・・総二郎」
「・・・え?」

あきらが不思議そうに見るから慌てて反対側を向いた。


**


その日の帰り、車の中でつくしが眠たそうに目を擦っていた。

「はしゃぎすぎなんだよ!ちょっと俺達の集まりに呼ばれたからって調子に乗りやがって・・・次は呼ばねぇからな!」
「総ちゃん、なんでずっと怒ってたの?今日、変な顔してたね」

「お前がついてくるから楽しめなかったんだよ!・・・鈍感!」
「え?私のせいだったの?・・・・・・ごめん、総ちゃん」

怒るかと思ったのに逆に謝られてドキッとした。
そのまま自宅に着いたら無言で部屋に戻っていった。俺は凄い罪悪感で一杯で・・・それでも「悪かった」って言えなかった。


数日後、少し茶会が落ち着いたからってうちのみんなで花見に行こうって事になり、これには志乃さんや事務長も行くからって当然のようにつくしにも誘いがあったけど、行くのを断わったらしい。
俺は面倒くさくて初めから行く気がなかったのに、祥兄や考も行くし、両親は滅多にしないことだからって命令のように言うしで、仕方なく行くことにして車に乗っていた。

両親の車は別・・・俺達兄弟3人とつくしが1台の車で行くもんだと思っていたら、祥兄と考が乗った時点でエンジンをかけられた。

「あれ?つくしはどうしたんだ?」
「つくしは行かないんだって!留守番してるって家にいるよ」

考が言った言葉に驚いて祥兄を見たら少し怒った顔をしていた。

「また何か総二郎が言ったんだろ?この前美作に行ったあと、つくしが部屋で泣いてたから」
「え?あの時あいつ、泣いたのか?」

「あぁ、泣いてたから声かけたら総ちゃんには言わないでっていうからさ・・・黙っててやったんだよ!」
「ホントによく泣かすよね、総兄ちゃん」


発進しかけた車から俺は飛び降りた。


****


つくしの部屋は誰もいなかった。

本邸には少ししか人がいなくて静かだ。多分家元達が全員で出掛けたからみんなもくつろいでるんだろう。

俺は多分あそこにいるだろうと思って裏庭の奥に向かった。
そこの桜の木の下・・・毎年つくしが1人で花見をする場所だ。

今日も絶対にそこにいるって思ったら、案の定そこで桜の木を見上げていた。


カサッて音で振り向いたつくしは俺の姿を見て驚いてた。

「総ちゃん?どうしたの?お花見行かなかったの?」
「あぁ、途中で降りて戻ってきた」

「なんで?行きたくなかったの?」
「あぁ、面白くないじゃん。家族で行っても」

「贅沢だよ。家族がいるだけでも羨ましいのに・・・」


俺はそこに座って本邸を見下ろした。つくしも隣に座って同じように本邸に目を向けた。

どのくらい時間が経っただろう、つくしがボソッと言った。


「美作さんち・・・楽しかったんだ」
「そうか。良かったじゃん」

「双子ちゃん、可愛かったぁ!」
「そうか?煩いだけだけどな」


「・・・進、どうしてるかなぁって思ったの」
「・・・・・・え?進?」


つくしの弟・・・唯一残ったこいつの家族。今は親戚の家に引き取られてて滅多に会わない姉弟・・・俺はそのことをすっかり忘れていた自分に驚いた。


「進もああやってお花見してるのかなぁって・・・私だけだったら悪いなぁって思ってね。だから今日はここで1人でお花見しようと思ったのよ」

「悪かったな、邪魔して・・・」
「いいよ、総ちゃんだもん。ありがとう・・・来てくれて。本当は1人で寂しかったんだ。泣きそうだったよ」


「泣かなくてもいいだろ。お前には・・・仮だけど5人、家族いるんだから」

そう言ったらやっぱり泣き出した。
結局泣くんだよな、こういう時・・・抱き締めてやりたいけど、もうこの歳でそれは出来ない。
仕方ないから背中だけさすってやった。


泣かせたの・・・俺だけど。



**



「蓮・・・桜、綺麗だねぇ・・・わかる?ほら、花びらが風に舞ってるよ?ダンスしてるみたいだよ?」
「あ~・・・ん、ま~・・・」

「ははっ!手を伸ばしても取れないよぉ!でもね、取らなくてもいいんだよ?お花はね・・・自然のままがいいんだよ」


つくしが縁側で膝に蓮を乗せて庭を眺めている。

もうすぐ1歳になる蓮に桜の花を見せてるんだ。
自分の家族と一緒に花見がしたかったつくしの春の楽しみだから。

もうすぐ小学校から蒼が戻ってきて、幼稚園から花衣が戻って来る。
今日も夕方は桜の木の下で子供達が遊ぶんだろう。


「つくし、茶を入れてやろうか?桜茶・・・昨日少し買ってきたんだ」

「本当?珍しいわね!総二郎も飲む?」
「あぁ、休憩するよ。ちょい待っとけ」


俺も同じように縁側に座って桜茶を飲んだ。
蓮は俺がもらって抱いてやるとすぅすぅ寝てしまって・・・つくしはそれを覗き込んでクスクス笑った。

「つくし・・・もうちょいこっち」

「ん?なぁに?」


桜の花しか見てないから・・・俺はつくしにキスをする。




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2018/03/03 (Sat) 12:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは!

えみりん様~!こんばんは。

えみりん様の泣きのラインは小学1年生でしょうか。
確かに中学生のイチャイチャでは泣きませんよね(笑)

私、個人的にはシロツメクサを喜んでる類に喜んでいます。
可愛くないですか?キュンキュンしてしまった♥

桜・・・私の勤めていた会社の前には桜がすごく沢山あって、散る前の桜吹雪は凄かったです。
もう怖いぐらい綺麗で・・・夜もその下を歩いて駐車場まで行ってたんですが足を止めて見ていました。

遠い昔、彼氏と夜桜見に行ったことがあるんですが、その時の桜が綺麗で忘れられませんねぇ(笑)
いい思い出だわ・・・あの頃に戻りたい(しみじみ)

で、確かに毛虫がつくのよね・・・それも結構沢山。


昨日桜餅の話をしたので、今日桜餅買って食べました♥
雛人形は娘がいないので・・・今年は出してない(笑)そんな元気がないのが本音ですけどね。

2018/03/03 (Sat) 19:43 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/04 (Sun) 01:16 | EDIT | REPLY |   
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2018/03/04 (Sun) 11:25 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんにちは♥

あっはは!コメント前半と後半の人格が違う(笑)

お話しは・・・甘酸っぱい感じでいつものように思春期前なんですよね、3話目は!
既に類がつくしだけ見てて、この頃から総ちゃんと違ってストレートなのよね(笑)

総ちゃん超スローカーブだから(笑)屈折しまくり。


で、あの件、ダメですか?いいと思ったのに~💦
私だけが元気になっちゃいけないと思うのよ。みんなが元気になりそうじゃない?(笑)

マジで嬉しかったぁ!いや、頭の上がじゃなくて「お話し」がですよ?
でもやっぱり想像しちゃう!!重いのかどうか!
何気にこれから時代劇見たら・・・マゲがアレに見えるかもしれない(笑)

ダメだーーっ!!笑いが出るーーっ!!
おかげさまで今日から復活しました(笑)

後は少しだけ残った身体の痛みが取れれば大丈夫!本当にありがとうございました♥

2018/03/04 (Sun) 14:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは!

桜の季節は私も思い出すのは子供を家から出した時の事ですねぇ。
子供の住んでるのが京都で桜がスゴく綺麗な場所なんです。

引っ越しの時、粗方片付けて子供と2人で桜並木を散歩しました。
子供を置いて1人で新幹線に乗って帰るとき、車内でボロ泣きしました。
あの時は寂しかったですねぇ・・・。家の周りの桜が咲くと、京都の桜を思い出します。

子供は今日も元気よくレッスンに向かったそうです。
親の心を知ってか知らずか・・・娘は季節関係なく楽しそう(笑)

今年の春は帰省もしないそうです。そんなものですよね!いまだに私は子離れ出来てないのかもしれません。

今日もコメントありがとうございました。
インフルエンザ、よくなりました!ご心配おかけしましたが、何とか生きてます(笑)

2018/03/04 (Sun) 14:31 | EDIT | REPLY |   

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