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つくしが大学に入った年、花火大会に誘った一つ上の男がいた。
それはあきらから聞いた話で直接つくしから聞いたわけじゃなかった。大学内で誘われてて、断る事が出来ずに頷いてたみたいだと。

「だからってなんで俺に言うんだよ。そんなのつくしが行くって返事したんならいいんじゃねぇの?もう子供じゃないんだから」
「いいのか?相手の男、あんまり評判いい奴じゃないと思うけど。お前の所で面倒見てんだから注意してやればいいじゃん」

「関係ねぇし。注意するんなら俺以外の人間の方が聞くんじゃね?」
「総二郎!」

余計なお世話だっての・・・本当に嫌なら断ることだって出来るんだから。
それを受けたって事は何があっても責任は自分が取るんだろ?もし・・・そのあとで何が起きても。

表向きは何も気にしてないフリして他の女に愛想笑いなんて振りまいてた。
だけどあきらから聞いたつくしを誘った男・・・そいつを見に3年の教室に向かった。


その男は確かに見た目はいいのかもしれねぇけど、どう見てもつくしのことを本気で好きだとは思えなかった。今も何人もの女を周りに置いて大騒ぎ。着ているものはブランド品でも中身は三流・・・品のなさが言葉遣いからもわかる。
知らん顔してそいつらが騒いでる横を通り過ぎようとしたら、その中の1人の女が俺に話しかけてきた。

「あら、総二郎君じゃない!珍しいわね、3年の教室に来るなんて!」
「あぁ、香奈さん?へぇ、学生してるときは清楚な感じなんだ?なかなかいいね・・・今度はその格好で飲みに行こうよ」

「えっ!西門君?ねぇねぇ、私も今度一緒に行きたい!香奈と行くとき一緒してもいい?」
「もちろん!先輩も素敵だね。でも、そこの彼氏が睨んでるけど?」

「あぁ、いいのいいの!この人何でもないから!女癖が悪くてマジで付き合ってる子なんていないんだから」
「・・・へぇ、そうなんだ?」

チラッとそいつを見たら俺の事をすげぇ嫌な顔で見てるが何も言わない。いや、西門には何も言えないって程度の男なんだろう。
こんな男に誘われて返事なんかしやがって・・・バカじゃねぇのか!あいつは・・・!


その日から俺の機嫌は最悪になった。



西門に戻ったらつくしが着物の部屋で志乃さんと何かを話していた。
近寄ってみたらそこに並べてるのは浴衣。つくしが花火大会に行くのに浴衣を選んでるようだった。

「そうねぇ・・・白地なんて涼しげでいいわよ?それかこっちの紺色は?」
「うーん。自分に何色が合うかなんてわかんないのよね。出来たら他の人と違う感じがいいな・・・迷子になっても見つけてもらえそうなものとか!」

「まぁ!浴衣をそんな理由で選ぶ人なんていませんよ!あら・・・総二郎様、お帰りなさいませ」
「総ちゃん、今日は早かったのね。あっ、総ちゃんに決めてもらおうかな・・・ね、時間ある?」

「は?何を決めるんだよ。まさかお前の浴衣?」
「そう!全然決められないの。ねぇ、どれがいいと思う?」

あの男のために着る浴衣を俺に選べって?アホらしい!そんなことが出来るか!・・・って返事もせずにその部屋を通り過ぎて自分の部屋に戻った。
一瞬見せた俺の険しい顔に志乃さんが悲しそうな顔したような気もする。

そこに並んでいた中ではミント色の地に小桜を描いたものが可愛らしかったけど、あの男と行くんなら何でもいいじゃん。それこそあいつに合わせて今時流行の下品な柄でも構わないんじゃねぇの?って西門にそんな下品なものなんて初めからないんだけど。

イラッとしながら自分の部屋に入ってさっさと着替えた。
今からこの気持ちをぶつけに街の中に・・・つくしのいない場所に繰り出してこんなこと忘れてしまおうって思った。




そして花火大会が行われる日、つくしは志乃さんに浴衣を着せてもらってる。
そう聞いていたから自分の部屋から出ずにベッドに寝転んで時間が過ぎるのを持っていた。

遠くで微かに聞こえたのは「行ってきます」「気をつけるんですよ?帰りは電話してね」っていうつくしと志乃さんのやりとり。今からつくしが出掛けるんだってわかった。

帰りは電話して・・・って帰ってくるんだよな?あの男と・・・って事はねぇよな?

そんな想いが頭の中で俺に何かを催促する・・・動けって命令してる。

なんで俺が!って自分に言い返しながら、それでも時間になったらベッドから起き上がって浴衣を出して着ていた。
”近江ちぢみ”で作った紺色のもの・・・強撚糸使いの織物を昔ながらの技法、しぼとり板と呼ばれる板の上で揉み出したものに新しい加工を加えた”手しぼ”ってやつで、見た目にも涼しげな印象の浴衣。

そいつを着て花火大会の会場に足を向けた。


鬱陶しいほどの人混みの中、俺はあいつを探すって言うよりただぶらぶらと歩いていた。

こんなものの何がいいんだ?
こんな暑苦しいところで花火なんかを大勢で見て楽しいのか?

やたら手を繋いだカップルがいる。みっともなくわざと独自にアレンジした浴衣の着方・・・ふざけた髪型に酷いヤツはスニーカー履いてる。中には膝丈の浴衣の裾からレースが出てる・・・呆れて言葉が出ない。
こんなものを目にするだけでイライラする。そして大きな声で叫ぶ屋台のおっさん。

花火大会ってのはこんな感じなのか?
初めて来たからわかんねぇけどこんな中で見る花火ってのはそんなに記憶に残るのか・・・さっぱり意味がわかんねぇ!
言葉にはしなかったが浮かんでくるのはそんな感情ばかりで、人にぶつかりながら会場の中を歩いていた。


その時、俺の前方でつくしがポツンと1人で立ってるのを見つけた。

その浴衣・・・俺がいいと思ったミント地の小桜の柄。
帯は明るい菜の花色で同じように小桜の柄が織り模様として入ってるヤツだ。帯に合わせて持っているのは薄い黄色の巾着、綺麗に結い上げた黒髪には花飾りをつけて。

あの男なんて傍にはいなかった。


まだ花火が始まってない夜空を見上げてつくしは1人で立っていたんだ。


自然と足がつくしの方に向かった。
その時、今度は俺の方に声をかけてきた女がいた。

「西門君じゃん!なに?浴衣なんて着てんの?やだぁ!ホントに茶道の人みたい!」
「あはは!似合うじゃん。いい男って何着ても似合うねぇー!今日は1人なの?」

この口の利き方だと何処かの飲み屋で会ったことがある女かも知れねぇけど俺には何の記憶もなかった。馴れ馴れしい上に品のない喋り方、俺がナンパしたって言うより勝手に一緒に飲んだってぐらいのヤツだろうけど。

「悪いけどあんた達の顔、全然覚えてねぇわ。だからごめんな。他、当たってくれ」

「えー?いいじゃん、この後飲みに行くんだけど一緒に行こうよ!」
「いい子が沢山いるよ?前みたいに遊ぼうよ!」

五月蠅い奴らだ・・・俺に触ろうとした手を振りほどいたら、その場面をつくしに見られた。
つくしは驚いたような顔で俺の方を見ていて、俺もそんなつくしを見て固まった。

何度か女の匂いをさせて帰ってつくしに泣かれたことはあったけど、こんな所を見られたことがなかったから。

「西門君・・・誰よ、あの女。知り合い?」
「地味な子じゃん。似合わないよ?趣味じゃないんでしょ?あんな子」

「お前らには関係ねぇだろうが!俺に触るな!」
「なによ!毎回手当たり次第に口説いてるクセに!あーんな子供みたいな女じゃ満足できないでしょ?」

そんな会話が聞こえたのかどうかはわかんねぇ・・・だけどゆっくり向きを変えられてあいつは人混みの中に消えて行った。
すごく・・・悲しそうな顔して。


すぐには動けなかった俺・・・不意に打ち上がった1発目の花火が会場を明るく染めたとき、あいつの泣き声が聞こえた気がした。





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2018/05/11 (Fri) 14:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様、こんばんは。

長くなったので分割したんで不思議な話になりましたね(笑)
後半部分で色々と判明します。

あははっ!
そう言えば毎回総ちゃんには女が話しかけてますねっ!
遊んでるからねぇ・・・オイタの数が多いから、総ちゃんってば!

でも、これがないと総ちゃんじゃないのよ~!

類だったら似合わないし。話しかけたとしても「・・・誰?あんた」で終わるよねっ!
司君だったら「なんだ、てめぇ!」っていきなり喧嘩だろうな。

最近の振り袖にも驚くことがありますけど、浴衣は本当にええーっ!ってなるものがありますよね(笑)
昔はそんなのを見て「格好悪い!」って思っていましたが、最近は「若いときだけだもんね」って大目に見れるようになりました。

私の子供なんて去年浴衣を着たって写真くれたんですが、柄がオカメインコでしたからね!
ホントなんですよ!真面目な話!

あれには驚きました・・・。

浴衣の柄が・・・オカメインコ。セキセイインコもあるらしいです(笑)

2018/05/11 (Fri) 23:25 | EDIT | REPLY |   

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