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舗装されていない砂利道をベビーカーを押しながらゆっくり進んで行って、そこの入り口まで来たら今日は蒼を抱っこして奥の方まで入った。
風が少しだけ吹いてて葉っぱが擦れ合ってサワサワと音をたてる。
少しソワソワした私の気持ちと重なるように・・・ドキドキしてる私のことを笑うかのように・・・。

黄色い花がこっちを見てるような気がした。


「気持ちいいねぇ、蒼。そろそろパパが飛行機から出てきたかな?もう少ししたら会えるよ。パパはね、すっごい格好いいんだよ?ママの初恋の人でね、ちょっと意地悪だけど本当はとっても優しい人なんだ・・・早く帰ってこないかなぁ・・・」


私が来ているのは、あの向日葵畑の真ん中にある小道。
ここには夏に咲く向日葵の他に10月まで花開く品種の向日葵が植えてあって、今でもその黄色い花が空に向かって開いていた。
真夏の向日葵より少しだけ落ち着いて見える秋の向日葵・・・元気がいいというより優しく見えるのは何故かしら。


私の背より高い向日葵の中を蒼を抱っこして歩いていた。
本当は10分抱くのも精一杯・・・重くなった蒼は手を伸ばして向日葵を触ろうとするけど私がそれに合わせてあげられなくて可哀想になる。ごめんね、でもパパが帰ってきてくれたらもっと高い位置から見せてくれるよ?

もう少しだよ?もう少し・・・あとちょっとでパパが・・・総二郎が帰ってくる。

初めはなんて声を掛けたらいいんだろう。私の口からどんな言葉が出るんだろう・・・半年ぶりのあの人の顔を見て。
「お帰りなさい」それとも「久しぶりだね」・・・そんな言葉じゃ足りない?


やっぱりドキドキしてる。
まだ・・・ソワソワしてる。
自分の中ではもう涙がそこまで来てる・・・今、声を掛けられたら間違いなく泣いてしまう。

グッと唾を飲み込んで顔を上げたら、真っ青な空に少しだけ白い雲があって・・・太陽が眩しすぎて目が痛かった。


総二郎はなんて言うかしら・・・私を見て、この子を見て一番初めにかけてくれるのはどんな言葉かなぁ。

「どうしよう、お前太ったな!って言われたら悲しいよね。いや、それよりも子供産んで老けたな!って言われたら泣くよね。だってね、昔からそういう所があるのよ・・・気持ちと反対のことを言ったり、わざと酷いこと言ったりするの。でも最後には絶対にママの味方だったな・・・」
「あ~・・・ま~、あ~」

「あはは!蒼に言ってもわかんないよね!でも、そういうとこパパに似ちゃダメよ?ふふっ!」

私の髪を引っ張る蒼・・・そんなに引っ張らないでって思ったら、後ろの方でカサッ・・・って音がした。

何だろうって思って振り向いたら・・・



向日葵畑の真ん中を歩いてくる人がいる。
背が高くて、黒い髪がサラサラしてて、優しい笑顔を向けて、ポケットに手を突っ込んだまま・・・歩いてくる人がいる。


うそ・・・まだのはずだよ?
でも、あれは彼の歩き方・・・私の時間が止まったような気がした。


そしてその人は私の目の前までくるとほんの少し首を傾けて、ほんの少し眼を細めてる・・・そしてあの低めの甘い声が私の名前を呼んだ。


「つくし、ただいま・・・遅くなったな」


「・・・総二郎?・・・なんで?時間・・・違うよ?」

「驚かせようかと思って早めちまった。ごめん・・・連絡、わざとしなかったんだ」

「こんなところでお帰りって・・・こんなところで言うの?私・・・今やっと、やっと気持ちが・・・落ち、落ち着いて・・・なのに!」

ほら・・・やっぱり意地悪したじゃん!
酷いよ、総二郎・・・こんなのびっくりしすぎて何言ってんのかわかんなくなったじゃないの!


「ごめんな、待ちくたびれて疲れたんだろ?」

「だって、だって・・・!心の準備が・・・」


「そんなもん、いらねぇよ。来いよ・・・つくし」


総二郎が両手を広げてくれる。
すごく、すごく優しい笑顔で私の名前を呼んでくれる・・・もう、泣いてもいいよね?声を出して泣いてもいいんだよね!


「総二郎っ!総二郎・・・っ!」
「つくし、会いたかった・・・会いたかった!すっげぇ会いたくて死にそうだった・・・!本当にごめんな」


蒼を抱っこしたまま総二郎の胸の中に飛び込んでいった!
総二郎は両手で私達を抱き締めてくれて、私は彼の胸に顔を埋めて声を出して泣いた。それにびっくりして蒼も泣き出したけど、この時の私は蒼をあやすことなんて出来なくて、ただ総二郎に身体を預けて泣いていた。

気がついたら総二郎が蒼を抱っこしてくれてたから、私は両手で総二郎の身体を抱き締めていた。

懐かしい香り・・・総二郎の香りがする。
背中に回した手で何度も彼の背中をさすって存在を確かめてしまう・・・そしたら「そんなに煽るな!」って彼らしい言葉が聞こえる。

少し泣いてしまって赤い顔した蒼が、総二郎の顔の横でキョトンとしてる。
まだほっぺたに涙が残ってて、総二郎と私を交互に見て眉毛がハの字になってるよ?驚いたんだね・・・男の人に抱かれたことがないから。
そんな蒼の涙を彼は指で拭いてくれて、真っ直ぐその目を見つめた。

「やっと抱けた・・・ははっ!俺に似てるな!・・・蒼、母ちゃんの面倒みるの疲れるだろ?よく辛抱したな!」
「・・・なんて事言うのよ!辛抱なんてしてないよ!仲良くやってたよ・・・」

「いい目をしてるじゃん。さすが俺の子だな。ありがとう、つくし・・・最高の宝物だな」

「うん、頑張った。みんなに助けてもらって頑張ったよ・・・私たちの希望だもん、蒼は・・・」


総二郎が蒼にキスしてる。
何度も何度も頬を擦り寄せて微笑んでる。それは初めて見る・・・父親になった総二郎の顔。

「やっぱり写真じゃダメだな・・・直接抱かないと実感湧かねぇや・・・俺、こいつの父親なんだな!」
「そうだよ?・・・嬉しい?」

「あぁ!すっげぇ嬉しい・・・初めて子供見て可愛いって思えたよ。ってか、やっぱいい男だよな!・・・将来が大変かもよ?」
「バッカだね!もうっ、何も変わってないじゃん!」

「女に囲まれるんじゃね?」なんて0歳児に向かって言う?
そんな彼を無視して、蒼は抱いてくれてる総二郎の腕の中で手を伸ばした。

「あ~!あ~・・・んっ~!」
「ん?どうしたんだ?・・・つくし、蒼どうしたんだ?」

「きっと向日葵見たいんだよ、私は高く上げてやれないからいつも下から見てるのよ」

「そんなことか!」って言って総二郎が蒼を高く上げてやると、向日葵の花を上から見下ろせるぐらい高くなった!
蒼は大はしゃぎで向日葵に手を伸ばして花を触っていた。それは嬉しそうにキャッキャッと笑い声を上げて。


「うわぁっ、すごいっ!良かったねぇ!蒼、パパは背が高いから・・・良かった・・ね」

また涙が出てきて前が見えない。
何度手の甲で拭っても後から後から流れてきて、私の顔はぐちゃぐちゃになってしまった。


「つくし・・・もう泣くな。俺はもう何処にも行かねぇから・・・」


蒼を片手で抱き上げてるくせに、フワッと私の身体を引き寄せて・・・優しいキスをくれた。



『良かったね』・・・向日葵からの祝福の声が私たちには聞こえた気がした。



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2018/02/11 (Sun) 12:24 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/11 (Sun) 12:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

やっと会えましたねぇ!そして、出た!お約束の一言!!(笑)

「来いよ・・・つくし」

これは外せませんでしたねぇ!手を広げて言ってくれるのよ?総ちゃんがっ!

・・・この「来いよ」ってのも他の人が言うと違うのかしら。
類だと「おいで?」司だと「来い!」あきらだと「来てもいいぜ?」(笑)みたいな?

で、これ、エロ専門用語じゃないから!言っておくけど(笑)日常会話で使える言葉です♥
旦那が言った場合は無視ですけどね。誰が行くか!って答えそう(笑)



何とか再会させられて良かった・・・!
だけど、もう一つ問題があるんだけど皆さん、忘れてるかな(笑)

2018/02/11 (Sun) 16:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

わんこ様、こんにちは!

大丈夫ですか?少し前にもありましたよね?癖になるからねぇ・・・。
無理せず、大事になさって下さいね!

はい、やっと会わせてあげられました!長かったこのお話ももうすぐ終ります。
あまりに気持ちが入りすぎたので、総ちゃんの次のお話しが纏まらないぐらいです(笑)
休んじゃおうかな・・・なんてことも考えたりします。

祥兄ちゃん、私もこの人はお医者さんがいいと思うんですよね!
そのお気持ちはすっごくわかります。やっぱり継ぐのは総二郎がいいんですけどね・・・(笑)

総ちゃんのお話で「こんな不思議な設定の話があったなぁ・・・」って記憶に残ってくれたら嬉しいな♪

もう少しだけお付き合い下さいね。
今日はありがとうございました。

2018/02/11 (Sun) 16:11 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/11 (Sun) 18:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、今晩は♥

ありがとうございます。喜んでいただけて私も嬉しいです。
ここが一番書きたかったところなので本日は緊張しました(笑)

頭の中でドラマのように想像しながらですが、それを文字にするとどうも上手くいかなくて・・・。

そうですね、これで終ったわけではないので(え?って思いました?)
もう少しだけお話しは続きます。あと・・・10話ぐらい?かな?

もちろんHAPPYに終りますが、もう一つ問題が残っているんです。実は・・・。

でも、ご心配なく!2人は離れませんから!
最終章までお付き合い下さいませ・・・。今日はありがとうございました。

2018/02/11 (Sun) 21:27 | EDIT | REPLY |   

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