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plumeria

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<side樹>
「ねぇ、パパ、今日は土曜だけどお仕事お休み?どこにも行かないの?」
「あぁ、ごめんな、一樹。父さん、ちょっと色々考え事しないといけなくて頭が痛いんだよ」

本来休みのはずの土曜日だけど、こうして家で休むのは本当に久しぶりだった。
これから春先に向けて新しく始まる案件が多く、休日といっても休むことが出来ない日が続いていたからだ。さすがに一樹に寂し思いをさせないために日曜だけは何があっても休んでいたけど。

今日も実を言えば会議資料を作らなきゃいけなかったが、どうしてもそんな気分にならなかった。


あの男が気になる。次の日からあのフェラーリは保育園で見かけなくなった。

一樹に聞いたら牧野さんの登園が早くなっているらしい。就業時間よりかなり早く保育園には来ているようだった。
だから一樹を送っていっても彼女の姿を見ることが出来ずにいた。
「さくら」にももういない・・・俺は数日間、牧野さんの笑顔を見ていなかった。

たった数回しか会ってないのにこんなにも彼女の笑顔が見たくて堪らない。
「一樹の父親じゃない俺と・・・」自分でも呆れてる。思いっきり告白してるようなもんだ・・・男がいるってわかってるのに。


「あーあ、つまんなーい!つくし先生はるいと遊んでんのかなぁ!」

「・・・るい?るいって誰?」
「ん?るいってね、つくし先生と仲のいいお友達の名前だよ?つくし先生ね、真っ赤な顔してお話ししてたもん!」

牧野さんが赤い顔して話す相手?・・・もしかして、あの男の名前なのか?
でも、るい・・・その響きに覚えがある。何処で聞いたんだろう・・・会社で?いや、そのほかの場所で?

俺は”るい”という名前に胸騒ぎがした。そう、最近何処かで聞いたんだ、その名前・・・それが思い出せなかった。

「なぁ、一樹・・・つくし先生、そのるいって人と暮らしてるのか知ってる?」
「ううん、知らない。でもね、7時に帰ってくるんだね?って聞いてた!ご飯つくって待ってるってお話ししてたよ?」

「そう・・・ご飯つくって待ってるって?じゃあ、そのお友達と暮らしてるんだね」
「わかんない。でも嬉しそうだった!」


赤い顔して嬉しそうに夕飯の支度をして待ってる・・・そういう関係以外には有り得ない。そして、もちろんあの男の名前だ。


*********


類のマンションにはスカイジャグジーがあって、その隣には小さいけどガーデンエリアがあった。
小さなベンチが置いてあって、そこから東京の街を一望できる。

美作さんが帰った後、私はそこでぼんやりとその景色を眺めていた。
そこまで天気は悪くないけど、ほんの少し雪が降ってる。それが窓ガラスに当たって凍っていた。

ここは開閉式の天井窓があるんだけど、今は真冬だから閉め切っている。
だから私にはその雪を手に取ることが出来ない。私の手に触れないから雪は結晶をそのまま窓ガラスに残してた。

私が触らなければ消えないんだ・・・また、そんなことを思い出してる。


自分はいつからこんなに悲観的な人間になっちゃったのかな・・・って思って嫌になる。
昔の私はこんなんじゃなかったのにな。問題が起きても立ち向かえば何とかなるって思っていた私は何処に消えたんだろう。
何が私をこんな臆病な人間に変えたんだろう。

ここの窓ガラスは強化ガラスだから分厚いのかな。私が内側から触っても雪は溶けなかった。


「牧野?何してるの?寒いからこっちにおいで・・・」

類が後ろから声を掛けてきた・・・ハッとして私は咄嗟に指を隠した。
だけどすぐに気が付かれたみたい。類はクスクス笑いながら近寄ってきた。

「また何か変な事考えてるんでしょ?どうしたの?・・・また、雪の結晶でも見てた?」
「うん・・・ここの窓ガラスにね。ほら、ここんとこ・・・綺麗な結晶が見えるでしょ?」

「そうだね。高い場所だから凍っちゃうよね!・・・あ!もしかして、寒いから今からジャグジーでも使いたかった?」
「あはは!まさか!そうじゃないよ。手の平に載せたらすぐに見えなくなるのにここだといつまでも見てられるんだなぁって思ってさ。綺麗な結晶、私が触らなければ消えないんだなぁって思ってたの。当たり前なんだけどね」


「自分の夢が雪の結晶と似てるって言ってたよね・・・触ったら消えるって」

「・・・馬鹿だよね。悪い方にしか考えないだなんて」

もう一度窓ガラスに指を当てて外にある雪の結晶の上をなぞるようにして動かしてみた。
類はそんな私を後ろからそっと抱き締めてくれる。そして私の耳元で囁いた。


「じゃあさ、この窓ガラスが俺じゃない?俺が真ん中に入って牧野と、牧野の夢を溶かさないようにしてるってのはどう?そう考えたらさ、少しは明るくならない?俺が夢を繋いであげる・・・あんたの幸せな未来を約束してあげる・・・それって良くない?」

「クスッ・・・類が窓ガラス?そんな風に考えたこともなかった!」
「そう思っててよ。直接触って壊れそうなら俺が間に入ってあげる。頼ってほしいんだ。牧野の人生、預けて欲しいんだよ」

ホント・・・何でこの人は私の欲しい言葉をこんなにあっさりと口にするんだろう。


この時、ガラス張りのこの部屋の上を飛行機が通過した。プライベートマークを光らせた飛行機が日本に到着したけど、類の胸に抱かれていた私は当然それを見てはいなかった。


*********

<side司>
「お帰りなさいませ、司様。今からはご自宅へ?それとも社の方へ?」

「一度社の方に向かう。車を回せ」
「畏まりました」

1年ぶりに日本に帰国した。
ここで数日間行われる会議のためだったが、それよりも牧野を探す方が目的だったかもしれない。

行き先はおそらく「あいつ」が知っているはずだ。
偶然か、そうじゃないのかは知らねぇが同時期に帰国した類・・・絶対に類が牧野を探し出していると確信していた。


昔からそうだ。あいつは誰よりも・・・この俺よりも牧野の事を理解しているような気がしていた。
顔色から気持ちを読み取り、言葉から行動を見抜き、俺が突き止めるより早く牧野を掴まえていた。牧野が何回かいなくなった時も見つけたのは決まって類だ。総二郎でもあきらでもない・・・無言で牧野を連れて帰ってくる。

そして俺の前に連れてくる。無表情だがその目は牧野をずっと見てやがった。


今回もおそらくそうだろう。


「車の準備が出来ました。こちらに」
「・・・三沢、類の行動を調べろ。フランスから帰国しているはずだ」

「は?花沢類様・・・ですか?了解しました」


類の行動の先に、必ず牧野はいる。



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2018/02/08 (Thu) 11:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

笑・・・だめだって!そんな痛いとこ突いちゃ!

その① 類って何処かで聞いたことがある・・・。忘れないって!(笑)
こんな名前、ペットならいるかもしれないけど人間で「類」とか聞いたことないし!
司も総二郎もあきらもある・・・でも、類はさすがにない!!
こんな名前、忘れる方がどうかしている!そんな人が部長でいいのか?

その② 窓ガラスになってあげる・・・そんなセリフ聞いた瞬間、病院行きを勧める!(笑)
万が一旦那に言われたら、その窓ガラス割ってる。

その③ 2人の上を飛行機が・・・はい!ドラマの見過ぎ。

反省てんこ盛りの27話でございました。
申し訳ありません。

2018/02/08 (Thu) 20:43 | EDIT | REPLY |   

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