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「それじゃあ行ってきます。類もお仕事頑張ってね!」
「うん、帰りはいつものように迎えが来るからね。急な予定変更は必ず電話して?」

「ん、わかってる。多分何もないわ」

月曜の朝8時、類に保育園の前で降ろしてもらう。
これは山本さんと類が会話をした次の日から始まったことだった。

山本さんと私が会わないようにと時間をずらして送ってくれるんだけど、本当はそんな心配もしなくていいのにって言いたかった。
だけど一度言い出したらきかないから黙って早めに送ってもらっている。

それなのにこの日は山本さんの方が時間を変えてきた。
門から少し中に入ったところで門柱に隠れるようにして立っていたみたい。私が近づくとスッとその場所から身体を見せた。


「おはようございます。牧野さん」
「え?・・・山本さん、どうしたんですか?今日はいつもより早いんですね」

「えぇ、今日は少し早出なんですよ。それに牧野さんが少し早めに保育園に来ていると一樹に聞きましてね」

慌てて振り向いたけど類はもう車を移動させていた。それを見て少し安心した・・・いや、全然疚しいことなんてないんだけど。
これを見られただけでまた類がとんでもないコトをしたら自分の身が持たないんだもの。あの時の首の痕を思い出してまた無意識にそこに手が回ってしまう。

「忙しいんですね。私も朝の準備を手伝おうと思って早めに・・・じゃあ一樹君、行こうか」
「うん!先生、行こう!」

この人とはあまり話さない方がいいのかもしれないと思って、すぐに一樹君を連れて園内に入ろうとしたけどやっぱり引き留められた。

「牧野さん、この前のことなんだけど、本気で言ったんです。ふざけたわけじゃないから!」
「あ、あの、でも私、困りますから!そういうの保育園では禁止されてます。それに・・・彼がいますから」

「こうやってわざと時間をずらして送ってるってことは俺を警戒してるってこと?」

入り口で大きな声で話しかけられたから、奥の方にいた先輩保育士さんがこっちを見ていた。これを園長先生に話されたらバイトを辞めさせられてしまう。自分の事ぐらいは自分のお金で生活したかった私はまだここを辞める気はなかった。

「あの!すみません。声が大きいです。他の保護者の方もいますし、教室から他の先生が見てますから・・・」
「ごめん・・・でも、避けられてるのかと思うと我慢できなくて・・・」

他のお母さん達が何事か?って顔して私達の横を通り過ぎていく。
それに我慢できないってどういう事?私たち、お互いのこと何も知らないし、知る必要もないし、私には類がいるのよ?

私の左手には一樹君もいるし、どう答えたらいいのかわからなかった。


「パパ、どうしたの?なんでつくし先生困ってるの?」

ここで言葉を出したのが一樹君だった。その言葉にハッとして一樹君の両肩を掴むと、私は山本さんに背中を向けた。

「何でもないよ、一樹君、中に入ろうね!・・・山本さん、それでは一樹君をお預かりしますね。行ってらっしゃい!」
「・・・牧野さん!」

もう振り向かないで急いで教室まで走った。一樹君には悪いけど、その手を引っ張って駆け足で下駄箱のある方に向かった。
そこで待っていたのは園長先生だ。


「牧野先生、どうかしましたか?他の保育士から連絡があったのですけど、特定の保護者さんとお付き合いなんてしていませんよね?」
「はい、していません。一樹君のことで申し送りがあっただけです。男性なので伝え方がお母さんのようにはいかなくて・・・それで戸惑っておられただけです」

「そうですか。まぁ、山本さんは父子家庭ですから特にこちらも注意してはいるんですけどね。その申し送りは他の保育士と情報共有して下さいね。あなたは周りから変な噂を立てられないように行動には注意して下さいよ?」

「申し訳ありません。気をつけます・・・」


園長先生に小言を言われる恐怖より、山本さんの「我慢できない」って言葉の方が頭に残っていた。


*********


午前中はフランスとのテレビ会議を行い、それが一段落して午後のプレゼンに参加するために資料に目を通していたときだった。
森本から来客を知らせる内線があり、間もなくしてドアがノックされた。

そこに現われたのは山城真莉愛。すでに俺の頭の中にはなかった彼女が再びにこやかな顔を向けて執務室に入ってきた。

「類様、お久しぶりです。お仕事のお邪魔をして申し訳ございません」
「・・・突然ですね。どうされたんですか?」

「あら!今日の事、類様からのお誘いだと聞いて参りましたのよ?まさかお忘れなのですか?」
「私からの誘い?何のことです?」

ここで森本を見たが俺と目を合わせようとしない。
まさか前田常務が俺に何も言わずに?それならそれでこの場ではっきり断わるだけだけど?森本を睨むと軽く咳払いをして説明をした。

「専務、本日は真莉愛様と昼食のご予定が入っております。場所はここからすぐのsouvenir( スヴニール )です。午後からの予定もございますので早めに行かれても宜しいですよ?プレゼンの用意は私がしておきます」

「・・・へぇ。日本本社は役員に確認もせずに予定を入れてるわけ?それほど秘書に権限持たせてるなんて聞いてないけど。役員秘書の見直し、フランスの両親が考えてるみたいだったけどこういうことがあるから・・・なのかな」

「そ、そのような事ではございません。前田常務の指示ですから!」

俺が何も言わないとでも思っていたのか、初めのうちは何も言わなかった森本も睨みをきかすとすぐに経緯を説明した。
前田常務が山城会長からの申し込みを受けて今日の食事会が決まったと。夜にしなかったのは俺が前と同じ行動をとって、真莉愛をこれ以上傷つけないためらしい。

馬鹿じゃないの?昼にしたって同じことなのに。
だけど、酒も入らないし、時間か来たら社に戻れるって言われれば仕方ない。真莉愛を伴ってその店に向かった。


もちろん車の中でも会話なんてするわけがない。
嬉しそうにニコニコ笑っている彼女を前にして余計眉が引き攣る・・・視線を外して窓の外のビル街に目を向けるしかなかった。

「souvenir 」に着いたらすぐにオーナーが直接案内をしに出てきて、俺はポケットに手を突っ込んだままテーブルに向かった。
こんな店に女性をエスコートするなら腕でも組むんだろうけど、悪いけど触れる気にもならない。
そんな扱いを受けてもまだ黙ってついてくる真莉愛の方に憐れみすら感じるぐらいだった。

テーブルについたらやはり薔薇の花が飾られている・・・イラッとするのを隠すことも出来なかった。
今日の事も俺の誘いではなく、自分の祖父の申し入れだと認めた真莉愛は幾分恥ずかしそうに演技しながら謝罪してきた。


「お仕事が忙しいのにごめんなさい。どうしてももう一度お話ししたかったんですの。この前のこと、お爺さまにお話ししたらちょっとご機嫌を悪くされてしまって・・・類様にご迷惑かけてんじゃありませんの?それをお詫びしたくて」

「謝りたいからって、忙しい昼の時間にこのような席を用意させたんですか?真莉愛さんはまだ仕事の経験があるわけではないからわからないんでしょうね。そういうことはメールで結構です。それこそうちの森本宛にメール下されば終わったことですよ」

「・・・申し訳ございません。直接会いたくて・・・お声を聞きたかったんですもの」

「もういいですよ。ここまで来てるんですから。どうぞ、美味しそうな料理が並んでますから」


すっごい迷惑・・・!
それに考えていることも全部わかってしなうような態度にうんざりした。


「この前ね、類様のマンションを教えていただきましたの。新しく購入されたそうですわね。どうしてマンションなんか購入したんですか?あんなにご立派なご自宅があるのに」

マンションの話を切り出されてピクッと手が止まった。
誰が真莉愛にその情報を?まさか、これも森本なのか・・・マンションには牧野がいるからまだ誰にも言うつもりはなかったが、仕事の都合上秘書にだけは居場所を伝えておかないといけなかったから教えただけなのに。

「私が何処にマンションを買って住もうが真莉愛さんには関係のないことですよ。そのように詮索されるのは好きではありません。今後、そのように花沢の人間に私の情報を聞き出すのはやめて頂きたい。はっきり申しあげて不愉快です」

「そんな!ご、ごめんなさい、そんなつもりじゃないんです!でも、お爺さまが私と類様は将来、一緒に住むようになるだろうから聞いておけって・・・そう言われたんですのよ?」


「・・・君と住む?」
「そうですわ。ですから、今は類様の自由を奪ってはいけないけど、そのうちは・・・って。花沢家もご納得されてると聞いてますわ」


そんなはずはない。”花沢家”は何も知らないはずだ。
食事が終わって真莉愛とはその場で別れた。当然送る義務なんてない。花沢の車は真莉愛に使わせ、俺はタクシーで社まで戻った。


そしてもう一度藤本に電話を入れた。

「藤本、例の件どうなった?変な動きない?」

『山城の金の動きに今のところ不思議な流れはありません。ですが、うちの観光事業部の方に不思議な経費の計上が見られます。もしかしたら、うちの内部の方で見つかるかもしれませんが、どうしましょうか』

「・・・一応探ってみて」
『畏まりました』


司のことを聞いたばかりなのに・・・面倒なことが重ならなきゃいいけど。




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2018/02/09 (Fri) 06:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます!

えみりん様~!おはようございます!

最近結構怒っておいでのようで・・・(笑)
まぁまぁ・・・順調は面白くないでしょ?ふふふ!このくらいは我慢しなきゃ♥

1人1人片付けていきますから!
えーと・・・最後まで粘るのは当然あの人ですけど・・・。

何となく雪の季節を過ぎそうな予感・・・。
駆け足で行かなきゃ春になっちゃう!!

インフルエンザ、流行ってますけど大丈夫ですか?
私の家族も罹ってしまって寝込んでいます。うつらないようにしなくちゃ!
少し寒さが緩むってホント?今日も結構さむいんですけどね~💦

えみりん様も気をつけて下さいね!


2018/02/09 (Fri) 08:22 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/09 (Fri) 12:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・今晩は!

あはは!出た!石川ひとみ(笑)
あの歌詞、恐ろしいですよね・・・でもカラオケで歌ったわ~!
この山本、シスコンの誠みたいに最後にはファンが出来るといいなぁ・・・(夢だけど)
真莉愛と再婚したらいいのに。

類君、山本が実は独身ってまだ知らないんですよね(笑)
知ったとき焦るだろうなぁ!と、楽しんでいる私。

真莉愛ちゃんは・・・まぁ、騒がせておきましょう。
実は読者さんのイライラを無視して、こういうキャラを冷たくあしらう類が好きです(笑)

毒のある類・・・マジ好き♥

だから向日葵で明日香ちゃんに攻撃する類とか楽しかったもん!(笑)
エロい類が一番苦手です・・・ごめんね、さとぴょん様・・・。

2018/02/09 (Fri) 19:13 | EDIT | REPLY |   

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