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真莉愛と別れて社に戻ると、これから外出する前田常務と出会した。
数人の秘書を引き連れて、まるでこの会社の代表を見るような周囲の振舞いに少しイラッとする。

俺が正面から入っても通路を譲ろうなんて気はないようだ。だけどこちらも立場上避けるわけにもいかない。軽く頭だけ下げて真横を通り過ぎようとした時に声を掛けられた。

「専務・・・お食事はどうでしたか?お話しが弾みましたかな?」

「・・・そんなわけないでしょう。特になんの感情も持っていない女性です。食べに行けと秘書に言われ、予約までされていたので行っただけです。それ以上の事は何もありませんよ」

身体の向きすら変えず、顔だけを向けた俺の事を生意気だと思ったんだろう、常務はピクッと眉を動かした。

「専務は頭脳明晰だと聞いていましたが・・・この状況がおわかりではないのならはっきり申し上げようか?」
「聞きましょうか?なんでしょう」

「山城真莉愛さんと正式にお付き合いいただきたいと申しているのですよ。意味はわかりますよね?真莉愛さんを花沢にお迎えするという意味です。もうその話はボチボチ進んでいるんですがねえ・・・どうも、専務だけがわかっておいでではないようだ」

それを聞いても驚くことも、慌てることもなかった。
俺にはその気なんて全然ないし。


「本人になんの話しもなく随分乱暴に話を進めるんですね。いつからそのような社風になりました?」

「それだけ後継者ともなれば会社の為に・・・と、考えなきゃいかんのですよ。それに専務といえど余りお若いうちから大きな態度に出ない方が良いと思いますがね。ご忠告申し上げますよ」

「そりゃどうも・・・」

俺達の周りにいる社員もこの様子に気が付いて立ち止まって見ている。
一向に顔を向けようとしない俺に余程腹を立てたのか、少し口調を荒くして言葉を続けた。


「こちらが何も知らないと思ったら大間違いです。専務がお一人でマンションにお住まいではないことも知っていますよ。相手の方に何も起きなければいいですけどね。良くお考えになることだ・・・!」

この言葉を聞いて、前田常務に背中を向けて歩き出していたのを止めて振り向いた。

牧野の事を知ってるのか・・・彼女に手を出すと?でも、どうしてそれを知ったんだ?
俺が振り向いたと同時に前田常務はエントランスから出て行った。


牧野の事は森本も知らないはずなのに・・・真莉愛も含めて前田の動きも監視しないといけないのかと思うとうんざりだった。


*********

<side樹>
「山本部長、例の事業計画書なんですけど検印お願いできますか?」

部下の三浦が持ってきたのは今度新しく取引を始める花沢物産との打ち合わせ資料と今後の事業計画書だった。今までの打ち合わせは相手の会社の規模からみても俺なんかが相手を出来るはずもなく、営業本部長や社長自らが出向いたりしていた。

しかし契約が本決まりとなり、これからは営業企画部が中心となって動いていくことからこれまでの資料が纏められてきたわけだ。それを手にとってパラパラと捲った・・・その中にある一人の名前が目に止まり、慌ててページを戻した。


花沢物産 専務取締役  花沢 類


そうだ・・・何処かで聞いたことがあるって思っていたけど、花沢類・・・「るい」という変わった名前だと、花沢物産と取引をすると決まった時に思ったんだ!

この企業の取締役名簿に並んだ社長の一人息子・・・この男が日本に戻って代表者になると噂されていた。
それならフェラーリに乗っていてもおかしくはない、むしろ妥当な車種じゃないのか?


だけど、これほどの規模の会社の跡取りが牧野さんと?彼女はアルバイトを掛け持ちするような・・・失礼だがそこまで裕福な暮らしをしているわけじゃなかっただろう?
今はこの男と暮らしているのかもしれないけど、俺と初めて出会った時はそうじゃなかったはずだ。

しかも、噂ではうちの社長のお嬢さんが花沢の一人息子と婚約するんじゃないかって・・・山城ではそう言ってなかったか?

「三浦くん、ちょっと聞くんだけど」
「なんでしょう、部長」

「うちの社長のお嬢さん・・・ここの跡取りとの話があるって聞いたことがあるんだけど、何かその後、聞いてるかな」
「あぁ、真莉愛さんですか?それだったら真莉愛さんの方が花沢の一人息子に夢中らしいですよ。会長を通じて結婚話が水面下で進んでるっていうのは聞いたことがありますけど、花沢が了承したのかどうか、そこははっきりとは知りませんね」

「そうか・・・ありがとう」


パソコンで花沢物産のHPを開いた。

確かにあの時の男・・・一樹が聞いた「るい」という仲のいい友だちは「花沢類」だ。


それなら尚更だ・・・どうして牧野さんと暮らしてるんだ?
こんな話が他で進んでるっていうのに!


もし、わかっていて彼女と暮らしているのなら絶対に許せない。
俺はその事業計画書を見ることも忘れて、パソコンの中で澄ましている男の顔を睨みつけていた。


*********


保育園が終ると類が手配してくれた花沢家の車でマンションまで帰る。
今日もその車は来ていて、マンションの入り口で降ろしてもらった。

「ありがとうございました。お気をつけて・・・」
「はい、お気遣いありがとうございます。牧野様、また明日お迎えに上がりますので」

運転手さんはどう思ってるんだろう。こんな私の送り迎えをさせられて・・・花沢家の運転手さんだから類からの依頼で動くだけだとは思うけど、なんの約束もしていない人間のお迎えだなんて嫌にならないのかしら。これも仕事・・・っていうことなのかな。
それでもとても丁寧に対応してくれる運転手さんに頭を下げて車を見送った。

今日は買い物もなかったから、マンションに戻った時間は午後5時。
これから類の晩ご飯を作らなきゃ。

「今日は何作ろうかなぁ・・・昨日がイタリアンだったから、やっぱり和食?あっさりしたものの方がいいかな?で、もちろん温まるものだよね!えっと、お味噌汁と・・・」

自分でも声に出してるってわかるような独り言。
それを呟きながらマンションの階段を上がっていって、エントランスに入った時だった。


正面のコンシェルジュのカウンターの隣、そこに黒いコートを着た背の高い男性がいる・・・そう思って顔を向けた。

次の瞬間・・・バクッ!と心臓に何かが刺さったような痛みが走った。


それは、余りにも突然に現われた彼・・・私は持っていた鞄を肩からストン・・・と落としてしまった。


「久しぶりだな・・・牧野」


黒いコートの男性から懐かしい声が聞こえた。



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2018/02/10 (Sat) 01:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おぉ~

ないない様、おはようございます。

コメントありがとうございます。
あれ?障害・・・多かったですか?(笑)
そんなつもり全然なかったんですけど、簡単に終らせちゃ面白くないような気がしてつい・・・。

しっとりと切なく、でも熱っぽく(笑)
今からその「障害」の方には一人ずつお帰りいただいて最後にはほっこりと・・・。

ってなればいいんですけど、やっぱり問題は雪のシーズンに終るのか?ってトコでしょうか。
そこ、私の拘りなんですけど(笑)

桜が咲く頃まで続いたりして・・・。
ご心配かけて申し訳ないんですけど、最後までお付き合いいただければ嬉しいです♥

今日はありがとうございました。

2018/02/10 (Sat) 09:45 | EDIT | REPLY |   
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2018/02/10 (Sat) 23:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さとぴょん様・・・こんにちは~!

書きながら思ったの・・・こうやってストレートに来るぐらいなら、何故帰らなかったんだ!(笑)
そんな設定にしたのは私だけど、完全に司君ファンの方を敵に回した感満載!

はい、ごめんなさい!反省・・・ちょっとはしてます!
わかってはいるんですよ、司君がそこまで悪い奴じゃないって事は・・・。
ちょい辛口のスパイスみたいな感じ?

どっちかって言うと前田の方が嫌ですよね・・・うん、早めに退治しましょうね!
その時はお嬢様も共倒れ・・・になるのかな(笑)

たっちゃんもやっと気が付きましたのでこれからは直接対決?
(いや、勝ち目はないけど)

ヤバい・・・障害作りすぎたかも・・・(笑)

2018/02/11 (Sun) 12:03 | EDIT | REPLY |   

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